下肢静脈瘤に対応する方法として、手術、硬化療法、弾性ストッキング、日常生活で気を付けること、があります。個々の患者さんの状態に応じて組み合わせながらよりよい治療を選ぶことになります。
手術
手術では下肢静脈瘤になってしまった血管を処理して静脈が瘤(こぶ)にならないようにします。全ての下肢静脈瘤の手術が日帰りで入院なしで行えます。手術にはいくつかの方法がありますが、実際には静脈瘤の状態に応じて組み合わせながら行います。
下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザーや高周波による治療) 手術時間 約20分
下肢静脈瘤血管内焼灼術(けっかんない-しょうしゃくじゅつ)は静脈の中にカテーテルを挿入し、レーザーや高周波で熱を加えて治療する方法です。下肢静脈瘤の手術となった場合、この方法で行うことがほとんどです。
局所麻酔に加え鎮静剤で眠ってもらい熱が発生するカテーテルを静脈の中に挿入し内側から熱を加えて静脈を縮ませて血液が流れないようにします。眠っている間に手術がおわりますので手術中は痛くありません。
2011年から健康保険が使えるようになり当院でも高周波カテーテルやレーザーを使用し、健康保険の適用になります。
下肢静脈瘤のレーザー治療(血管内焼灼術)とは
下肢静脈瘤へのレーザー治療として最近は聞くことも多くなってきたと思います。熱が発生するカテーテルを静脈の中に挿入し内側から熱を加えて静脈を縮ませて血液が流れないようにするというものです。血管内焼灼術(けっかんないしょうしゃくじゅつ)と呼ばれます。
2011年から健康保険が使えるようになり全国的に広がりました。それまでは自費診療として手術が行われて高額な費用がかかりましたが、現在では新しい器械でも健康保険を使うことができます。
先端の金属コイルに高周波電流が流れ発熱し約120度となるように制御されます。静脈の中で発熱し、静脈の内側のタンパクが縮んでしまいます。
レーザーカテーテル治療
ファイバーの先端からレーザーが出ます。水に対する吸収係数が高い1470nmレーザーは、熱エネルギーが静脈壁に深く浸透せず、 効率的に静脈壁を収縮することができます。
レーザー治療(血管内焼灼術)の特徴
これまでは下肢静脈瘤の手術は抜去術が主流で入院して全身麻酔で行われることも多かったです。それがこのレーザー治療(血管内焼灼術)では体への負担が少なく手術をすることができるようになりました。血管の中にカテーテルを挿入して手術を行いますので、傷はとても小さくなりました。また麻酔も局所麻酔で行えるので手術をしたその日に家に帰れるようになりました。
手術後も痛みや内出血も少なくなり、半分以上の人は鎮痛剤を飲まずに済むぐらいです。
新しい下肢静脈瘤の治療法
下肢静脈瘤のグルー(接着剤)治療が健康保険適用になりました。
今、一番新しい下肢静脈瘤の治療法が大変注目されています。
令和元年12月に健康保険で治療が可能になったことで、大変多くの治療が行われるようになりました。
当院でも、この最新の治療方法法である「接着剤治療(グルー治療)」をいち早く採用しております。
このグルー治療は、「下肢静脈瘤の血栓塞栓術」と呼ばれ、静脈内に医療用接着剤を注入して働きが悪くなった静脈を固めることで血液の逆流を止める治療です。
手術の方法は、従来の血管内焼灼術(レーザー・高周波)と同様に、静脈の中にカテーテルを挿入して行う治療ですので、傷跡は針穴のみです。
このグルー治療について、メリットや費用について、説明していきます。
グルー(接着剤)治療と、レーザー(血管内焼灼術)の比較
グルー治療のメリット
(血管内焼灼術と比較した場合の優位点)
① 麻酔は針を刺す部分の局所麻酔のみ。大量の局所麻酔、静脈麻酔は不要。
② 手術後の合併症である深部静脈血栓症や神経障害(しびれ)が少ない。
③ 手術後に弾性ストッキングを履かなくてよい。(手術前にむくみが無い方等)
グルー治療のデメリット
(血管内焼灼術と比較した場合の欠点)
①接着剤に対するアレルギーが出る方がいる。(欧米では数%)
②静脈のコブが大きい方は、後日に硬化療法の必要がある。
グルー治療の場合の欠点について
アレルギー反応が起きる可能性(わずかです)が、あります。
これは、接着剤の成分であるシアノアクリレートに反応する可能性がありますが、欧米でも数%報告があります。
アレルギー反応を事前に予測することは難しいですが、体質的にアレルギーを起こしやすい方、様々なものにアレルギーがあるような方は、リスクがあるといえます。万が一アレルギー反応が有った場合も、ほとんどは通常のアレルギー治療に準じた投薬治療で改善することが多いです。
静脈の瘤(コブ)が大きい場合は、個別に処置が必要となります。
従来のレーザーを使った術式でも、瘤が大きいと残ってしまうことがあります。レーザーを使った血管内焼灼術であれば同時に瘤切除術などを追加で行うことが多いですが、グルー治療の場合は瘤切除術は行わず、後日硬化療法で薬を使って静脈を固める治療が選択されます。
(この場合、グルー治療の手術とは別日に行います)
このグルー治療の数年後成績を確認すると、残った瘤が時間の経過とともに縮んで目立たなくなるという報告があります。
瘤がそれほど気にならない方や、すぐに見た目の改善を求められない方は瘤の治療を行わず経過を見ていくこおとも可能です。
治療方法には、それぞれメリット、デメリットがあります。
患者さまの症状とご要望に合う治療法を提案させていただきますので放置せずに、まずはご相談ください